2011年3月4日金曜日

後半を書いた

いや、秘策というのは実はない(というより昨日からの「つなぎ」の意味で書いただけだ)が、医師は時間がなければ、クリニックのスタッフに精神療法を発注してはどうか、と言いたいのである。精神科のクリニックには(臨床)心理士以外にもMSW(精神保健福祉士、ソーシャルワーカー)、ナース等が働いている。このうち(心理士さん達は心理療法を自らの職分と思っていらっしゃるから問題ないが、精神科のナースやPSWは、心理療法家としての能力を潜在的に持ちながら、そもそもケースを持たされないということがある。彼らに応援を頼むのだ。

そもそも考えてみよう。精神科医として新患を担当する際、薬物療法以外にも話をゆっくり聞いてあげられる環境を提供したくなる場合は多い。というより新患の大半はそうなのだ。しかし精神科医は何しろ「一時間に12人」の世界に生きている人が多いので、ほとんどそのニーズに応えられない。だから精神科医の通常のあり方は、常に患者さんの精神療法のニーズを常に満たすことしかできないで、薬物療法にのみ対応できるという、慢性的なフラストレーションを抱えていることになる。そこにそれを行なうことのできるスタッフがいたとしたら、大変ありがたいことなのである。
そこでこんな疑問を持つ人がいるかもしれない。「精神科のナースやPSWはトレーニングをしていないのにいきなりケースを持つことはできるのだろうか?」その懸念を持つのはわかるが、では果たして精神科医は精神療法のトレーニングを経てから患者さんを持つのだろうか?私自身は5分間の薬物療法も一種の精神療法だと思っているから、精神科医が外来デビューをするときは、精神療法家としてのデビューでもあると思っているが、彼らが精神療法をいきなり始める(あるいは始めたつもりになっている)のは、それが自分の職務だと思っているからだ。PSWもナースも、患者さんと1,2週に一度、30分ないし50分のセッションを持つことが自分の仕事だと思い始めれば、最初の2,3ケースに戸惑うくらいで、後はぐんぐんできるようになっていくものである。(そもそも精神療法は座学ではない。)
もちろんすべてのPSWとナースが精神療法が実際にできるとは言っていない。そうやってケースを任せていくうち、PSWとナースの中に、精神療法に向いていて、これからも任せることができる人とそうでない人が見えてくる。それを精神科医の頭の中で選別して、後はできるナースにケースを振っていく。後は精神科医は短い再来にそのナースを交えるなどして、そこで起きていることを把握していけばいいのである。
このPSWとナースに精神療法を任せる素地はちょうど整っている。何しろ通院精神療法は、もともと誰に任せてもいいのだ(あるいは誰に任せてもいけないのだ??)。だって本当は医師本人がやっているはずのことなのだから。それにケースを担当したPSWとナースの中には、それにやりがいを見出して、精神療法家として開花する人はたくさんいるだろう。精神療法のケースを持つとはそういうことだ。ちょうど米国でPSWがケースを持つようになって、また家族療法ではまさに彼らの独壇場ということになって、やりがいを見出すことになったPSWがたくさんいたのと同じである。