2011年2月13日日曜日

うつ病再考 その(6)「心のうつ」と「脳のうつ」は合併し、影響しあう

昨日、痛恨のアップし忘れ。

今日のテーマ。「『心のうつ』と『脳のうつ』は合併し、影響しあう」

いくらなんでもこんなテーマに興味を持ってもらえるとは期待していない。こんなタイトルの本を書いても絶対に売れないだろう。今日のブログを最後まで読んでくれるのは、私のゼミの小澤さんくらいだろう。しかし重要なテーマである。
まずうつ病ないしは精神疾患一般について、その原因 cause ときっかけ trigger との違いから説明しなくてはならない。原因は文字通り、その病気を引き起こす出来事。精神科的にはその原因が明記されているのはASD(急性ストレス障害)PTSD、適応障害、転換性障害くらいだ(DSMによれば)。何しろ原因を追究しないという原則になったDSMでも、適応障害やストレス障害にまで「原因は不明である」とはいえない。外傷後ストレス障害(PTSD)と呼んでおきながら、「でも外傷が原因ではありません」、とはいえないからだ。
ということは、ここにあげたいくつか以外のおよそあらゆる精神障害は、それが始まったときの事を調べても、せいぜいきっかけくらいしか見出せない。きっかけ、とは原因ではないものの、ある一連の出来事の流れの最上流にあるもの、というニュアンスだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」の「風」といったらいいだろうか。このことわざの説明によれば、「風」の次のステップは「人の目にほこりが入る」だそうだが、ほこりが目に入るのは、風のせいばかりではないだろうし、風が吹いても実際にほこりが立たないこともある。つまり一対一の因果関係が成り立たないという意味で「風」はきっかけというわけだ。
そこで「脳のうつ」の話に戻るが、これにもきっかけくらいはあることが多い。うつが噴火の機会を待っている休火山だとしたら(また懲りずに火山のたとえである)、地殻のちょっとしたずれとか、地盤の脆弱な部分とかをきっかけとして噴火するだろう。脳のうつも、ちょっと落ち込むことだとか、体調不良などは見つかることが多い。もちろんきっかけがなく生じる精神疾患も多い。でも探せばたいてい何がしかが見つかるものだ。
これも休火山のたとえを考えればいい。噴火を始めた火山のどこかに何らかの弱さが見つからないということなどあろうか?ちょうど江戸時代に最後に噴火した富士山は、以前の噴火口からではなく、わき腹のあたりに弱いところを見つけてそこから噴火したように(ここら辺うろ覚え。要出典)、どこかに何かの誘引を見つけようと思えば、見つかるものだ。
脳のうつの場合も、もしきっかけが見つからないときには・・・我々はそれを作り出してしまうのだ。よくこんな話を聞かないか。「彼は発病するまではすごく元気だったけれど、後から考えれば、あれでエネルギーを使い果たしたんだね。」つまりきっかけが見つからないこともきっかけと読み取れるということだ。
さてこの原因ときっかけを区別したのは、次の点を理解して欲しいからだ。脳のうつはいろいろなきっかけで生じることが多い。心のうつでさえ、きっかけになる。」なんでこんなややこしいことを言っているかというと、「どうしてうつが誤解されやすいか、心の弱さと間違えられやすいかを最後に「証明」しようとしているからだ。続きは明日に回す。