2010年5月9日日曜日

(承前)私がこのFちゃんの事を思い出すのは,これがおそらくFちゃんに一生ついてまわるだろうという憐憫の気持ちである。彼女が破壊的な動作に快感を覚えてしまうという傾向はおそらくこのまま残っていくのだ。もちろんそうならない可能性もある。彼女は友達に優しくすることにも快感を覚えるようになるかもしれない。あるいは破壊的な行動に快感を覚えなくなる可能性もある。ただいわゆるビッグ5と呼ばれる性格傾向の安定性についても様々な研究がそれを伝えている。
ここでIPAという言葉を導入しておこう。Inborn Pleasurable Act つまり「生来の快感的な行動」という意味であるが,これでFちゃんのような破壊的,簡単に言えば「意地悪」な行動がそれに相当する。それが快感を呼び起こすために,いつの間にかそれを繰り返す。実は一番それが現れるのは物心付く前の幼少時なのである。人はそのうち様々な知恵をつけ,防衛機制を用いてそれを隠していく。あるいは昇華しようとするかもしれない。でもIPAはかなりしつこく残っていく。なぜならそれは脳の一種の wiring (配線)に関係しているからである。
IPA はその人の行動の「動因」を考える上で便利な概念である。「動因の心理学」にとっての鍵概念と言ってよい。それは「性格」や「人格」に結びついているが,それとは異なる。おそらくそれを構成するような要素となるだろう。IPA はそれ自体は目に見えにくい。それはその人の様々な行動の背景にあり,それらの行動は複雑に絡み合いながら,最後にはその人のIPA としての意味を持つ。
民主党の剛腕 Oさんのことを考えてみる。彼の IPA の一つは確実に「他人を力で支配する」であろうし,彼がどのような政治的な発言をし,綺麗事を並べても,いかに自分の行動を正当化しようとしてもそれを満たすところに行き着く。もちろん彼には別のIPA も存在するだろう。聞けば犬を溺愛しているという。かなりナイーブな形での政治的な理想を持っているとも聞く。それはあまりに強い「他人を力で支配する」IPA を少しでも和らげるためには助けとなるだろうし,彼の人格に厚みや広がりを与えているのである。しかし幼稚園時代の彼が目の前にいたら,おそらくかなり「F ちゃん的」だったはずなのである。