6.メンタライゼーションを促進すること
後に述べるようにBPDの治療において中核的となるのが、メンタライゼーションの能力、すなわち他者の思考や行動を理解する力であり、その上で自分自身の思考や行動が他者の心にどのように映るかについての理解である。そこでは例えば患者の挑発的な言動について、それを咎めたり早計な解釈を行ったりするのではなく、外界の他者ないしは治療室における治療者にはどのように映るかについて率直に話し合うということである。
7.治療同盟を確立し、維持すること。 PDの心理療法においては治療関係やラポールの成立や維持が極めて重要であり、治療の成否を占うものであるともいえる。このことは数多くの研究が共通して示していることである。上述のメンタライゼーションの促進についても、おそらくそのベースとなるのは治療者が患者に共感し、かつその限界についても自覚しておくことであろう。治療者と患者が相互に自分ないし相手の共感が有限であることを受け入れることは治療の重要なステップと考えられる。
8.逆転移感情をモニターすること。治療者が自分が治療場面でどのような感情状態にあるかについて知ることは、力動的な治療を超えて恐らくあらゆる治療のモダリティにおいて必須である。そのために治療者は適切なスーパービジョンやケース検討の機会を利用する用意がなくてはならない。
9.トラウマの視点を忘れないこと。今の患者のあり方が過去に経験したトラウマを反映している可能性があるという視点を保ち続けることで、患者に向ける共感の質や度合いが変わることがある。もちろんそれはすべてをトラウマで説明しようとする試みとは異なることは言うまでもない。最近の研究が示すのは、愛着不全がパーソナリティ全体にもたらす影響である。これは5にも関連し、治療者は患者の攻撃性に注目すると同時に、それが背後にある傷付きの問題をとらえることによりそれが必要な分だけ相殺される事への自覚が必要であろう。
10.患者を変えようと思わないこと。治療者が治療的なヒロイズムに陥り、患者の不適応的な側面を改善しようと試みることは、時には患者に多大なストレスとなる。患者が発達障害傾向を有する際には、特的のものの見方や行動パターンを変えることは自分の感覚を失うことに匹敵するような意味を持つ。