ところでIPAのスタンスはどうか。驚くべきことに、こう書いてある。「精神分析的精神療法は低頻度(週に1,2セッション)で、対面法で行う。[精神分析とは異なり]治療の目標は特定の問題の解決(例えば関係性や仕事場での問題)、鬱とか不安症である。もちろん転移と逆転移は精神分析と同様に起きるが、患者の人生に直接かかわる問題を扱う一方では、それらはしばしばバックグラウンドに置かれて解釈されない。つまりそれらは患者の人生に直接かかわる問題を扱うことに譲られる。しかし時には後になって、より深い問題を扱うために、回数は頻回になり精神分析に移ることがある。」
エーっ、である。IPAまでそうはっきり言っているのだ。
https://www.ipa.world/IPA/Dev/About_Psychoanalysis/Psychoanalytic_Treatment_Methods.aspx
ともあれ米国精神分析協会も米国心理学協会も、そして国際精神分析協会も、そのHPでうたっているのは精神分析と精神療法がいかに類似しているかであり、それは例えば「精神分析的精神療法は精神分析と極めて近い。つまり自由連想が用いられ、無意識を重視し、患者・治療者関係を重視することである。」(米国心理学協会のHPより、岡野(2023)で引用)という記載にもみられる。つまり精神分析と「週一回」の間に、「スペクトラム」は存在するものの、「週一回」の分析的な意義は認めているのである。精神分析と精神療法の差別化について「コンセンサス」の形でここまで論じている私たちにすれば、少し拍子抜けという気もする。現代の精神分析の潮流を見るためには、このHPを覗いてみるということが、実は一番手っ取り早いのだ。
岡野 憲一郎 (2023) 精神分析的精神療法の現状と今後の展望 .最新精神医学 28 (3), 195-201.