2024年9月21日土曜日

統合論と「解離能」15 

 ところが、である。このポールセンの本を読み進めると、「統合」という章が出てくる。それを要約しよう。そもそもEMDRは本質的に統合を促すものである。「クライエントがEMDRを受けると、それまで分断されて未処理だった一連の神経系統の集まりが統合されていきます。」(p.249)「EMDRやそのほかの結合に向けた治療を進めれば、おのずとパーツ同士の<統合>が生じます。葛藤が解決され、トラウマ題材のBASK要素が処理されて、それぞれの要素が結合的に”縫い合わされる”につれ、解離障壁は薄くなるか消失していき、クライエントの明瞭な知識として蓄積されることになります。」(p.249)「自然に融合されてはいないけれども、治療初期に比べれば、もはや構造面や機能面でさほど明確に区別されていない交代人格の断片のことを、私は”破片”と呼んでいます。”破片”は取り立てて分離したがっているわけではないので、統合するのは難しくありません。こうした簡単な<統合>はこの後事例1で説明します。」(p.249)。  さてこの事例1で、治療者はこんなことをする。 「ポニー自身はもう分離した人格でいる必要はないと感じていて、キムと統合されたがっていることが分かった。キムも賛成だと言った。その後解離障壁を残しておいた方がよいと思われるようなトラウマ記憶が残っていないか入念に確認してから、両側性刺激を行なって、残った解離障壁を取り除くことになった。キムとポニーの準備が出来ると、私は「キムとポニーが自分の目を通して外界を見ています、壁が崩れます、壁が崩れるよ‥・・・」と言いながら、両側性刺激を何セットか行った。「どうですか?」と私が尋ねると、キムは「変な気分です、両手がピリピリしています。」と答えた。「その感覚に注目していてください」と私は言い、そのままもう何セットか両側性刺激を続け、確認に入った。「ポニー?」すると金は「ポニーはもう分離していません。私の中にいます」と返事をして笑った。それは私が知っているポニーの笑い方と同じだったが、それも今やキムの特徴として統合されたのだ。」ちょっと長い引用になったが、これから何を考えることが出来るだろうか?私は「え、そんなに簡単にできるの?」という反応である。この引用の前に、キムの中にいた多くの子供のパーツがかなり少なくなったということに気が付いた、とある。「色々なパーツが抱えていたBASK要素の処理が済んで自己に吸収されたので、子供のパーツはキム本人から解離している必要がなくなったのだ。」