2024年7月17日水曜日

PDの臨床教育 推敲の推敲2

  1800年代にクレペリン、シュナイダーなどにより精神医学が整備された際に、彼らは人格障害の分類にも着手した。例えばクレペリンは軽佻者、欲動者、奇矯者、虚言者、反社会者、好争者の7つに分類し、シュナイダーは類似のものを10個提示した。結局これらがひな型になり代々引き継がれてDSMに至ったと考えればいいだろう。

 DSM-Ⅱ(1968)まではシュナイダーやクレッチマーのモデルに類似したものだったが、DSM-Ⅲでは精神分析におけるBPDや自己愛性格の理論を背景に、これらを含んだ独自の10のひな型が提示されていた。例えばボーダーライン(BPD)や反社会性パーソナリティ障害と聞くと、比較的直ぐに「あ、ああいう人か?」と思い浮かぶようなネーミングが施された。そしてこの10のひな型はそのままDSM-5(2013)にも踏襲されたのだ。ただし精神医学の内部でもこのPDの分類には様々な問題が指摘されるようになっていた。 それをDSM-5自身から引用するならば、「特定のPDの診断基準を満たす典型的な患者は、しばしばほかのPDの基準も満たす。同様に患者はただ一つに一致することは少なく、結局特定のPDに分類されてしまう。(p755)」
 これは言葉を変えればジェネリックなPDのようなものがあり、それに該当するか否か、あるいはそれはどの程度深刻なのかについて考える方が理にかなっているということになる。

 さてもう一つ取りざたされるのは、10のカテゴリー分けにエビデンスがない、という批判である(Bach)。 もっとも筆頭にあげられるべきBPDはいったん置いておこう。従来それと同列に扱われることも多かったスキゾイドPDについては、それと発達障害との区別はますます難しくなってきた。スキゾタイパル、スキゾフレニフォルムなどはDSMでは統合失調症性のものとして改変されている。また自己愛性PDについては、それが置かれた社会環境により大きく変化して、あたかも二次的な障害として生まれてくる点で、従来定義されているPDとは異なるニュアンスがある。

 ということで結論から言えば、DSMの10のカテゴリーの少なくとも一部についてはあまり信憑性もなさそうというのが実感なのである。私は個人的にはカテゴリーモデルを捨てきれないが、その候補として残るのは恐らくBPD,NPD,反社会性、回避性くらいということになり、これはまさしくDSM-5 の代替モデルで最終的に提唱されたカテゴリーに近いということになる。

ただしその中でしぶとく生き残るのがBPDなのだ。