2023年4月6日木曜日

私の共感論 推敲 5

 いかに共感するか

ここからの話は治療者が共感を行う事に特化した問題を扱います。というのも最近の共感に関する研究は興味深い結果を出しているからです。
 最近の共感に関する理論は、それを情緒的な共感と認知的な共感に分けるという方針です。情緒的な共感は相手の気持ちに寄り添い、それをいわば心で感じ取ることです。例えばつらい体験をしている人の話を聞いていると、一緒に辛くなるといった体験です。 それに比べて認知的な共感とは、いわば頭で人の気持ちを理解するという意味での共感です。
 例えば歯が痛いという人の話を聞いて、自分でも痛いような気がしてくるのは前者で、後者は「ああ、あなたは歯が痛いのですね」とその事実を理解するということです。この後者はいわゆる「心の理論」と同等のことです。しかしここでややこしいのは、この心の理論には二つあるというのです。認知的な心の理論と、情動的な心の理論です。この区別は、前者は人の考えを理屈で理解すること、後者は人の情動を理屈で理解するということです。なんだかこんがらかってきますね。そして皆さんもおそらくお判りでしょうが、共感はこれほどクリアーカットには分類できないということです。

歯の痛みについて例にあげましょう。

 以下略