2022年10月21日金曜日

神経哲学の教え 12

 脳オルガノイドはほっておくと大脳になる??

 ユウチューブで「脳は作れるのでしょうか?Beyond AI サイエンスカフェ(第6回)」を見た。https://www.youtube.com/watch?v=XoF7gO5bPVg&t=2075s

この動画には東京大学生産技術研究所准教授の池内与志穂先生が登場し、脳オルガノイドのお話をする。ちなみに最近研究者たちが人のIPS細胞を三次元に培養して様々な臓器モドキを作る研究がおこなわれている。それがいわゆる「オルガノイド」であり、例えば腎臓の細胞の塊が腎オルガノイドというわけだ。(~ノイド、というのは~モドキ、ということである。)そして池内先生グループが研究なさっているのが、人のIPS細胞から作成した神経細胞を培養したものが「脳オルガノイド」と呼ばれてさまざまに研究されているというのだ。彼の研究で興味深いのは、二つの脳オルガノイドを離しておいておくと、途中の培養液に軸索を伸ばし、もう片方と結びつくという現象についての話なのだ。脳オルガノイドはごく自然に他の神経細胞との交流を求めるというわけだが、そこで早速問題になるのが、脳オルガノイドをどんどん大きくしていくと、心を持つのかという問題である。もちろんこれは答えの出ない問題であるが、彼がチラッと言って私が注意を止めたのが、脳オルガノイドは他の脳オルガノイドを置いてその結びつきを研究しなくとも、それ自身が大きくなっていって、大脳になる、という話だ。おそらく大脳皮質の6層構造を持った塊ということであろう。この話がどうして面白いかと言えば、これはDMN(デフォルトモードネットワーク)について言っているかもしれないからだ。DMNは基本的には外からの刺激を遮断する形で活動する。おそらく私たちの脳は基本的にはたとの交流がなくとも自己生成を行う可能性があり、脳オルガノイドの「他との交流を持たせずに放っておくと大脳になる」という所見はそれを示唆しているのではないかと考えるのである。