いったいこの二か月は何だったんだろう。膨大な時間をかけて書き上げた「パーソナリティ障害概論」。私より適任者はいくらでもいるのに、である。そもそもボーダーラインや自己愛性について書いたことはあっても、パーソナリティ障害に関する専門的な論文など書いたことがない。せいぜいエッセイどまりだ。でもそのおかげで、この年齢で知っておかなければならない知識をいかに欠いているかを思い知った。勉強不足である。好きな事ばかり書いて、読書嫌いな私には、この種の宿題はどうしても必要なようである。そしてそのおかげで大学院での「精神医学概論」を10年間続けることが出来た。いったいこの依頼論文という注文を受けずにいたら、私はどうなっていたことだろう。
ということで「最後に」を書いた。
最後に
本章ではPDについての総説的な解説を行った。PDの概念は今なお流動的で、今後も更なる発展を遂げる可能性を秘めているという事情を伝えることが出来たことを望む。PDは通常の精神疾患と正常の間に位置するという考え方、通常の人格がいくつか有する傾向の偏諱としての考え方とがあり、最近のディメンショナルモデルは後者に従ったものである。ディメンショナルモデルは従来のカテゴリカルモデルに比べてより実証性を重んじた分類と言えるが、それがそれを用いる側にとってどれほど臨床的に有用なのかについては、今後の回答が待たれる。