2022年3月31日木曜日

他者性について その53 混線状態について追記する

 ちなみに新しいICDの診断基準(ICD-11,World Health Organization)には、新しく「部分的解離性同一性障害 partial dissociative identity disorder」という基準が加わりました。これも少し長いのでPDIDと書き表すことにしましょう。
 このPDIDについては中山書店の「講座精神疾患の臨床」の第4巻の解離の部分に、私の担当した文章として掲載されています。然しほぼICD-11の文章に従ってまとめたものです。
 
 本症におけるアイデンティティの破綻は、「二つ以上の、他とはっきり区別されるパーソナリティ状態(解離アイデンティティ)の存在を特徴とし、自己感と意志作用感の顕著な断絶を伴う。各パーソナリティ状態は、独自の体験、知覚、思考、および自己、身体、環境とのかかわり方のパターンを有する。」「一つのパーソナリティ状態が優位で、通常は日常生活(たとえば、子育てや仕事)の機能を担うが、1つ以上の非優位のパーソナリティ状態による侵入を受ける(解離性侵入)。この侵入は、認知的(侵入的思考)、感情的(恐怖、怒り、または羞恥心などの侵入的感情)、知覚的(たとえば侵入的な声や一瞬よぎる視覚、触られたという感覚)、運動(たとえば片腕の不随意運動)、および行動(たとえば意志作用感や自分の行動であるという感覚を欠く動作)に及びうる。これらの体験は、優位 dominant なパーソナリティ状態にとってはその機能を妨げ、かつ典型的には不快なものとして体験される。非優位 non-dominant の状態は、意識および機能について、日常生活の特定の側面(たとえば子育てや仕事)を反復的に行うほどには、意識や機能の実行統制を担うことはない。しかし時折、限定的かつ一時的なエピソードにおいて、特定のパーソナリティ状態が、限局的行動(たとえば極度の情緒的状態への反応や自傷のエピソードの最中や外傷的な記憶の再演中)のための実行制御を担うことがある。

 つまり人格Aは人格Bの侵入を受けるという現象はDIDを有する方にとってはむしろ日常的にみられることなのです。