Stern と Bromberg の理論は現代的な分析家の多くにアピールすることとなった。多くの分析家たちは一見DIDの症状を示す患者を扱い、精神分析的な理論やテクニックがどの様に応用できるかについて思案している。ある精神分析の学会におけるラウンドテーブルの企画で、S. Itzkowitz,
R. Chefetz, M. Hainer, K. Hopenwasser, and E. Howell (2015) という5人のエキスパートたちが考えを交換しているが、その中でもHowell と Itzkowitzという二人の分析家がこの件について積極的に意見を交わしている。Howell は Ferenczi の理論に従い、理論を展開するのだが、彼女の扱っている患者は概ね、van der Hart の言うタイプ(2)に該当する。Itzkowitz は「解離的転回 dissociative
turn」という概念を打ち出し、私たち臨床家が解離を扱う際は、分析的な考え方を展開させる必要があると説いている。
ワーキングスルーの過程の目的は、自己の状態を一つの統合された個人に固定することを必ずしも意味しはしない。精神分析の目的は、自分を守るための手段として解離を必要としたりそれに頼ったりするという問題を解決することであり、以前は知らないでいた自己のパーツとの有意義な形での関係性の意味を知り、それを構築するのを助けることである。
これはHowell も述べているように、精神分析において何が必須なのかについての私たちの考えの推移ともかかわってくるであろう。つまり無意識の探求から、自己の創造と自己実現への推移である。