2021年8月14日土曜日

他者性の問題 10

 Fairbairn, Winnicott, and Sullivan.

フェアバーンの語ったスキゾイドメカニズムの理論は Pierre Janet Morton Prince などの語った理論と深いつながりを有していた。例えば Fairbairn はこのように言っている。

「スキゾイド過程は,興味深いこの現象にも含み込まれていると見倣されなければならない。また夢遊、遁走、二重人絡、多重人絡といった解離現象についても,向織に理解されなければならない。二重人格や多重人格といった現象について言えば Janet William James また Morton Prince が記載している数多くのケースを慎重に検討してみると、それらのケースは本質的にスキゾイド的な性格を持っていると推定することができるように思う。(相田、栗原訳対象関係論の源流、p15

残念ながら Fairbairn の理論は特定的 specific でなく、スキゾイドとスプリッティングを交互に用いているという所があり、心的な構造の分離という独自の性格について焦点を当てたものではなかった。スキゾイド問題は英国の対象関係論において盛んとなったが、Breuer が最初に記載した、二重意識を想定した「類催眠」の概念とはかなり異なっていたというべきであろう。

Winnicott Fairbairn の同時代人であったが、彼も解離を数多くの文脈で語った。彼は健康で自然な解離とトラウマに関連した解離とを区別した (Goldman, Abram, p. 339)。このうち前者は真の自己を基盤にしたものだが、後者はトラウマ状況が生じたときに防衛的な操作と共に生じるとした。Winnicott が言ったのは、過去の原初的な苦悩は、彼がそれを受け入れる用意がないならば彼の個人史には組み込まれないとした。ここでの前提は、やはり主体は複数ではない、ということである。彼はそれを通過したが決して経験はしなかった主体が、最終的にそれを取り入れるというプロセスが起きている。そこに決して見られないのは、二つの主体があって、最初の主体が原初的な苦悩を体験し、もう一つはそれを知らないという想定である。このことからわかるのは、彼らは精神分析に偉大な貢献をしたにもかかわらず、彼らの論じた解離は基本的にはvan der Hart の言うタイプ(1)であるということだ。

Sullivan の論じた解離についても触れておく必要がある。彼の業績はそれに正しい判断が下されるまでにはたくさんの時間を必要とした。しかし彼が解離に置いた強調点は確かなものであった。「彼によれば、抑圧ではなく、解離こそが第一の防衛機制であった。なぜなら彼にとっては原初的な危険は、耐えがたい体験の再現であり、原初的な内因的なファンタジーの吹き出しではなかったからだ(Stern, Dell, p. 653)