さてこのOSの問題は、もちろん昨年以来私たちを悩ませているCOVID-19 の出現よりかなり前から論じられており、ユング派の専門誌によれば、近年では中国での大掛かりな研究が2005年から中国とアメリカで行われたことが知られている。中国の70人の精神科関係の専門家がアメリカ人の分析家から教育分析とスーパービジョンをすべてオンラインで受けながら、週3から5回の精神分析と、週に一回から三回の力動的精神療法を行ったものである。これはかなり大きな議論を巻き起こしたというが、それでもこのTeleanalysisに関する実証の伴う研究は、少なくともCOVID-19以前には少ないと言われていた。しかし現在では様々な研究が行われていると想像する。
紙ベースで送られてくるInternational Journal of PAの最新号にも、すでにいくつかのコロナ関係やteleanalysisの論文が見られている。本来はこのような発表にあたってそれらの文献を読むことから始めるべきであるが、まずは例によってこの問題に関する私の個人的な経験を整理したい。私は何か論文を書く場合にはまず文献を読む前に自分の現実の体験を書いておくことにしている。それは文献を読んでいく段階でかなり知性化されて行ってしまい、現実の体験を理解するうえで様々なバイアスを持ってしまうからである。
私の体験からお話すれば、私は昨年の春まではZOOMを用いた対話というものをほとんど体験していなかった。それが心理面接やスーパービジョンの代替手段になるともあまり真剣に考えていなかったし、それを用いたカンファレンスや研究会にもそれほど興味を持っていなかった。実際の対面での面接や研究会などにはとてもかなわないだろうと思っていたからだ。しかしコロナの影響でやむを得ずZOOMを用いることになり、OSは思っていた以上に活用ができることに驚いているというのが正直なところである。ただしOSは、カメラ・オンとオフでかなり異なるという実感があり、時と場合により使い分ける必要があると考えている。