なお従来のパーソナリティ障害の概念との関連では、シゾイドパーソナリティ障害と回避性パーソナリティ障害が考えられる。前者は「社会的関係からの離脱と感情表出の範囲が限定される」(DSM-5,p.635)と定義され、ほとんど離脱の特徴をとらえていると言っていいであろう。また後者は「社会的抑制、不全感、および否定的評価にして売る過敏性を示す」とされている。(DSM-5,p.635)。
更に離隔の概念について現代的な理解からは、それを性格特性だけではなく発達障害との関連で理解することも今後必要になる可能性がある。多くの研究が自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)における愛着の問題や、情緒的な離隔の傾向について論じている。まだこの問題に関する文献は乏しく、そもそも性格特性と発達障害との関連を論じる理論的な素地は事実上見られなかったと言っていい。しかしASDの特徴としては、DSM-5によれば「複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥があること」とされ、さらに「社会的関心の欠如、減少、または非定型性があって、それは他者への拒絶、消極性、または攻撃的または破壊的に見える不適切な働きかけとしてあらわ得る」とある。しかしそれはまた人によりその程度に大きな差があり、これらの特徴が比較的軽度な形で対人関係においてみられた場合には、それは離隔傾向と非常に類似する可能性もあろう。むろん生得的で神経学的な異常を基盤にしていると考えられる発達障害と、「その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り、広範でかつ柔軟性がなく、青年期又は成人期早期に始まり、長期にわたりかわることなく、苦痛又は障害を引き起こす内的体験及び行動の持続的様式」(DSM-5,p.635)とでは同一の俎上に載せられないともいえる。