2020年8月6日木曜日

ミラーニューロンと解離 12

DID についてのDSM-5の記載の2)は以下のとおりである。

解離性同一症をもつ人は,自らが突然自分自身の発語や行為の離人した観察者となり,それを止める力 自己感覚)がないという感覚を報告することがある.そのような人は声の知覚 (:子どもの声,泣き声,霊的な存在からの声)について報告することもある. 場合によっては,声は,多数の錯綜し互いに独立した思考の流れとして体験され,それに対して本人は制御ができないと感じている.」

これはいわゆる作為体験の例と言える。これはいわばAという人格がBという人格からの侵入を受けている状態であり、そこには自己感の障害が存在しているといえるだろう。しかしではこれが生じない場合、すなわち人格ABは明確に交代し、その間互いに侵入が体験されない場合もDIDでは頻繁に起き、むしろそのような体験様式の方が、彼らの体験の主たる部分を占めることになる。それらの場合においては自己の障害は見られないということであろうか。
  百歩譲って、自己感覚および意志作用感の突然の変容または不連続が、このような作為体験以外の形で生じていて、それをDSM-5が記載していないだけであるという場合を考える。その場合は、「複数のパーソナリティ状態によるアイデンティティの破綻」という場合、そこにはある統一した、主となるアイデンティティないしは仮想的に統合されている人格を想定していることになることになりはしないだろうか。そしてその仮想的な統一人格が異なるアイデンティティに分断されていることで、自分が誰かがわからず、混乱している様子をこの定義は描いているように見られる。