2020年7月15日水曜日

ICD-11における解離性障害の分類 書き直し 9

6B64 解離性同一性障害 Dissociative identity disorder

「解離性同一性障害においては、二つ以上の異なる人格状態(解離性アイデンティティ)の存在により特徴づけられる同一性の破綻があり、そこでは自己および主体の感覚の顕著な不連続性がみられる。それぞれの人格状態は、自己、身体、環境に関する経験、認識、想起、関連の独自のパターンが含まれる。少なくとも二つの異なる人格状態が、日常の特定の側面の行為(例えば養育や仕事)や、特定の状況(例えば脅威と認識されるような)における振る舞いなどにおいて、意識や、他者や環境と交流する機能の実行統御を繰り返し行う。人格状態の変化には、感覚、知覚、情動、認知、記憶、運動制御、および行動における関連する変化が伴う。そこには重篤なものとなりうるような記憶喪失のエピソードが典型的な形で見られる。
B16 部分的解離性同一性障害 Partial dissociative identity disorder
 部分的解離性同一性障害においては、二つ以上の異なる人格状態(解離性アイデンティティ)の存在を特徴とする同一性の破綻があり、そこでは自己および能動性agencyの感覚の顕著な不連続性がみられる。それぞれの人格状態は、自己と身体と環境を経験し、知覚し、理解し、それらと関係する上での独自のパターンを有する。一つの人格状態は優勢dominantであり、正常な日常生活(例えば養育や仕事)において機能しているが、1つ以上の劣勢non-dominantの人格状態によって侵入される(解離的侵入)。それらの侵入は、認知的(侵入的な思考)、感情的(恐れ、怒り、恥などの侵入的な感情)、知覚的(例えば侵入的な声、一過性の視覚、触れられた感じなどの侵入的な感覚)、運動的(例えば片方の腕の不随意的な動き)、または行動的(例えば能動感や自分自身の行動という感覚が欠如した行為)であろう。それらの体験は優勢な人格状態にとってはその機能を妨害されたと体験され、通常は不快に感じる。劣勢の人格状態は、日常の特定の場面(例えば養育

や仕事)を繰り返し行うほどには、意識や機能の実行統御を行えない。しかし特定の人格状態が限定された行動(例えば極度の感情的な状態や自傷のエピソードの最中や外傷的な記憶の再演の際の反応として)に携わるために実行統御を行うような、挿話的で限定された一過性のエピソードがありうる。
6B66 離人感・現実感喪失障害 Depersonalization-derealization disorder

「離人症は、自己を奇妙な、あるいは非現実的であると感じたり、自分の思考、感情、感覚、身体、または行動から切り離されたりdetached fromそれらの外部観察者であるかのように感じることを特徴とする。離人症はまた、情緒的ないしは身体的に麻痺したように感じたり、自分を遠くから眺めたり、『劇の中にいる』と感じたり、知覚的な変容(例えば時間の感覚の歪曲)の形をとったりする。現実感喪失症は、他人や事物や世界が奇妙で非現実的である(例えば夢を見ているようだったり、遠くに感じたり、霧がかかったよう

な、生命のない、色のない、あるいは視覚的に歪曲されたものと感じる)と体験されたり、周囲から自分が切り離されていると感じたりすることを特徴とする。」

6B1Y その他の解離性障害  other dissociative disorders

「以下に限定されて診断される。すなわち他の解離性障害と同様の主たる症状(すなわち解離性障害は、アイデンティティ、感覚、知覚、感情、思考、記憶、身体の運動または行動の統御のうち一つないしそれ以上に関して、正常な統合が不随意的に破綻したり不連続性を呈したりする)がみられる。しかし症状はこのセクションに提示された解離症のいかなる条件も満たさない。またほかの精神科疾患(たとえばPTSD、複雑性PTSD,統合失調症、双極性障害)によりより良く説明されることはない。また中枢神経系に働く物質や薬物の離脱症状(例えばブラックアウトや薬物中毒の最中の混乱した行動)を含む効果によるものではない。それらにはや薬物使用によるものではない。それらはまた神経の疾患(例えば複雑性部分発作)、睡眠覚醒障害(例えば入眠時、出眠時における症状)、頭部外傷やその他の健康障害によるものではない。」