2020年5月6日水曜日

トラウマ難治例 7


5. 現在のトラウマないしストレスファクターの層
最後の層としてあげたいのは、現在進行形のトラウマないしはストレスファクターの存在である。これらにはあらゆる種類のものが含まれる可能性がある。すでに述べた併存するうつ病やパーソナリティ障害、発達障害などはことごとく現在進行形のストレスファクターとして数えられることになるし、その他の精神疾患の存在も同様である。さらには慢性的な身体疾患や身体障碍などもこれに相当するであろう。また腰痛やひざ痛などの慢性疼痛のために日常生活が思うように送れないこと、あるいは災害の被災、貧困なども多くの難治例を生む可能性がある。
さらに私が特筆したいのは、現在進行形の対人関係におけるトラウマファクターだ。さらに具体的には、成人後の親との同居、ないしは配偶者との同居からくるストレスである。様々な事情から親との同居が継続し、そこで幼少時に生じたトラウマが形を変えて繰り返されるケースがある。幼少時の両親からのあからさまな虐待やネグレクトが存在していた場合にはなおのことであるが、そうでない場合にも親からの精神的な支配が継続している際にはトラウマからの回復のプロセスはさらに遠のく。さらには配偶者からの精神的、身体的なストレスを体験している人も多い。多くのトラウマの体験者が加害的な関係性から逃れることに困難さを抱えていることに注意しなくてはならない。
これらの現在進行形のトラウマが生じている際のトラウマ治療は事実上不可能であり、結果的にそのケースは難治例となるであろう。