2020年3月8日日曜日

揺らぎ 推敲 9


べき乗則を可視化してみる
  
べき乗側について一言で言えば、ある値の規模が単調に大きくなるにつれて、それに対応する値がグングン、級数的に、つまり10のn乗倍として変化していくということだ。そしてべき乗側がこの世を支配する、ということは私たちの生活にこのような例はいくらでもあるということだ。
たとえば私たちが有する所得について考えよう。例によって人が持つ所得の行列を考える。するとおそらくほとんど一文無しの人の列が延々と続いて、たまに小金もちが並んでいる。かと思うとごくごくまれにそこそこのお金持ちがいる。そしてその額によってそのお金持ちのレア度が増していく。ごくごくまれに億万長者が混じっている。
あるいはCDを売れ行き順に並べる。すると自費で出した売れないCDの列が延々と続き、時々ヒットが混じっている。そしてヒットの大きさと同時にレア度が増していく。それらを暇な人が売り上げ順に並べると、以下のような表ができる。これがいわゆるロングテール(長い尾)の図式で、左端に行くほど天体の大きさ、所得の大きさ、CDの売れ行きは大きくなり、該当する天体、人、CDの数は莫大になる。他方右端はおそらくとんでもなく永遠に続いていく。
この説明からわかることは次のことだ。揺らぎとは、この表に現れる値(所得、CDの売れ行き、天体、など)を順不同に、あるいは値に関係ない順、例えばアルファベット順に並べたようなものなのだ。世の中の大部分の人は低所得で、その額はどんぐりの背比べだ。でも時々そこそこに高所得な人も交じってくる。それが揺らぎなのだ。小川のせせらぎなどはこの部分だし、風に揺らめくカーテンや旗もこの部分に相当する。日常はこれがほぼ永遠に続くように考えられるので、これを「揺らぎ」などと、のんびり表現しているわけである。
ところが実際はロングテールの頭に属する部分も時々顔を出す可能性がある。だから揺らぎは突然巨大化する可能性を持っているのだ。揺らぎはどんなに波のように見えても、正確な正弦波や同じサイズのジグザグではない。それは時に大きく、時に小さくなり、突然とんでもない大きさの揺れを可能性として含む。ここで「可能性として」というのは、それは実はめったに起きないからだ。でも起きる時は起きる。そんなことが起きてもおかしくないことを予告するかのように、揺らぎは最初から不規則で、ある意味では予想が不可能なのだ。ここら辺、株価の動きに敏感な人は良くわかるだろう。
地震の話に戻って考えよう。地面は常に揺らいでいる。それはおそらく地殻のどこかで小さな岩がずれるということが起きているために起きる。つまりはプレート同士が少しずつズレながら動いている、という、ある意味では不安定な状況が生じているからだ。(地殻やプレートが全く動いていないのであれば、地震など起きようもない。)