失敗。私たちが生きていくうえで決して避けて通れないもの。ここにも揺らぎが関係している。
失敗をすることで初めて私たちは何かを学んでいくということは確かであろう。しかし失敗は私たちの心を深くえぐり、苦しめる。私たちが生きて社会で機能を果たすうえで必然的に生じる失敗とは、いわば揺らぎが必然的にもたらすもの、揺らぎの影の部分とも言える。
ハインリッヒの原図 |
かなり昔のことであるが、ある機会にこの失敗というテーマについて発表する機会があり、それから深く考えるようになった。やがて私は畑村先生の「失敗学」(畑村、2005)なる学問があることを知り、さらに興味を持つようになった。失敗とは私たちが決して避けることが出来ないもの、私たちの本性が関わっていることである。そしていわゆる「ハインリッヒの法則」なるものを知り、それに惹かれていったのだ。しかしこのテーマが本書で論じている揺らぎや冪乗則に関係することなどは思いもしなかった。ただ確かにこの法則はべき乗側と似ている。いわば同じ匂いがするのだ。そこで念のためにこのハインリッヒの法則をここにお示ししよう。まずはハインリッヒが示した原図である。
畑村 洋太郎 (2005) 失敗学のすすめ. 講談社文庫