脳の全体の揺らぎがシンクロナイズすること
ここで一つ補足説明が必要かもしれない。脳の活動を理解する際に、ひとつの決め手はそこで生じている脳波がどの程度同期化しているかどうか、ということだ。脳波計は大脳皮質で起きているさまざまな信号を拾うのであるが、普通はそれぞれの部位がバラバラな活動をしている。ところがある事柄について、それを一つのもの、ないしは同じものと見なすという現象は、脳のある部分が一緒になって活動していることを意味する。例えばAとBが、実は同じ物体だということが分かった時、両者に関する信号は同期化するのである。
このことをもう少しわかりやすく説明しよう。私たちがある遮蔽物の上下で動く物体をみるとする。その際上下の物体は互いに別々の方向に動いていると認識されるため、視覚野においてそれぞれに反応している部位は、ばらばらの信号を出す。ところがその遮蔽物を通して、上下の物体まるがつながっていることが分かった場合、視覚野における上下の物体に反応した部位は、同期化する。つまりは脳波の位相(山と谷の位置)が一致するのである。(これに最適の図をどこかの本で見たが、あいにく見つからないので省略。)