デフォルトネットワークと創造性
さてこのデフォルトモードネットワーク、最近では創造性を生み出すネットワークとしても注目されている。スリニ・プレイ氏の著書『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』(千葉 敏生 翻訳、ダイヤモンド社、2018)を参考にする。
プレイ氏によれば、DMNの消費エネルギーは、集中状態の時に消費されるエネルギー量と比べ15~20倍も多く、DMNはそれだけ重要な働きを持っているはずだと現在の研究者たちは考えているという。本当かな。そしてDMNを「鍛える」手段まで上げている。それらは運動、瞑想、独り言、空想や物思い、であるという。要するにこれらの活動をしているときは、脳はDMNの活動を示しているということだ。そして本書で著者が勧めているのが、マルチタスク能力を高めるということだ。これはどのようなことだろうか。
又吉氏のひらめき(NHKサイトより) |
ただしDMNが興奮しているだけではおそらくあまり意味がないのであろう。先ほどプレイ先生が挙げたDMNを鍛えるための「運動、瞑想、独り言、空想や物思い」について考えてほしい。もしこれだけをひたすらやったとして、その人の人生は実り多いものとなり、創造性が発揮されるのだろうか? おそらくそうではない。ある創造的な活動を思い描くといい。偉大な発想を持った天才があるひらめきを持ったとする。すると彼はあたかも夢から覚めたように、その発想の科学的な根拠を精査するだろう。DMNは直ちに課題遂行ネットワーク(TPN)に移ることで、それを形にする必要があるのだ。そしてそこでやはり必要となるのが、DMNとTPNとの絶えざる揺らぎといえるのだ。