2019年10月26日土曜日

アトラクター 推敲 2

アトラクターを視覚的なイメージに捉えていただいたうえで定義に戻ろう。調べると次のような定義が成書には見られる。
「力学系において、運動がそこに終息していくような点ないしは集合である。アトラクターの形状は曲線様体、さらにフラクタル構造を持った複雑な集合であるストレンジ・アトラクターなどをとりうる。カオスな力学系に対してアトラクターを描写することは、現在においてもカオス理論における一つの研究課題である。」(Wikipedia「アトラクター」の項を一部改編)
これでわかるだろうか? 無理だろう。まず力学系、という意味が不明である。重力などの力が働くという話だろうか? しかし力学系は英語の dynamic system を指し、これは物体の間の相互作用により生じる運動を意味する。運動というからにはそれが時間とともにどのように移り変わっていくかという意味を含む。
私なら次のようにアトラクターを定義したい。
「物体などがおたがいに作用しながら運動するとき、その行き先がある地点に落ち着いたり、ある形を繰り返し描いたりする時、その行先をアトラクターと呼ぶ。」
どうだろう。これでわかりやすくなるのではないか。ただしこの運動とは、何も物体だけではない。(そこで物体など、と定義したのだ。) たとえば温度でも湿度でも、風向きでもいい。それをグラフに描くとどこかに収束する(まとまっていく)傾向にあるならば、それもアトラクターである。
こんな変な例は自然界のアトラクターには存在しないと思うかもしれないが、自然界のアトラクターはまさにとんでもない変化を見せることがある。それがいわゆる「ストレンジ・アトラクター」である。
そこでアトラクターの不思議さを知るためにはやはり視覚的な説明が一番である。



例えばよく出てくるローレンツのアトラクター。xyの三軸の座標に広がる奇妙な蝶ネクタイのような図をよく見かけるだろう。しかしおそらくほとんどの人はこれが何を意味するかを知らないはずだ。でもストレンジ・アトラクターの例としては定番である。
さてこの図を見せられても、面白そうであっても結局何のことか分からないだろうし、自然現象はアトラクターにあふれているといってもその意味が分からないだろう。