2019年3月20日水曜日

複雑系 15


揺らぎ

ところで分からないといえば、揺らぎほどわからないものはないという人もいるかもしれない。そして揺らぎはフラクタルと大いに関係がある。あらゆるレベルで揺らぎが見られる、ということとフラクタル性とはほぼ同じことを言っている。それはどういうことだろうか。
ある非常に緩やかな高台が存在する。それも側面から見れば極めて正確な台形をした台地である。そしてそこに雨が降る。その台地はもろいが粘土質で、水をあまり吸い込まないとしよう。すると雨水はどのようにして流れるだろうか。はじめは台地のいろいろなところに水溜りを作るだろう。そしてそのうち水かさが増して水溜りが融合して水があふれ出し、台地の端から下に流れ落ちる。それも対置の四角形の縁から均等に流れるだろうか? 決してそんなことはない。一部が削れて水路となり台地を削っていく。だから台地の縁はのこぎりの歯のように削れていくのだが、その水の流れはジグザグであるはずだ。つまり揺らぎが見られる。そして雨水の流れが十分にゆっくりであったら、その水の流れを拡大して見ていっても(つまり縮尺を変えても)ジグザクの度合い、密度は変わらないだろう。これは海岸線がフラクタルを形成しやすいということを、それが形成される状況を想像しながら説明したわけだが、ここに示された揺らぎ、とは要するに、水が行き当たりばったり、いい加減に流れる、ということである。
Google Earth から拝借しました
しかもそのいい加減さは、どのレベルでも同じ程度に、なのだ。一体どういうことだろうか? 地表も水の流れも数学で予測される通りにはならない。それは分かる。問題はそれがどうしてフラクタル的になるか、なのである。どうしていい加減さがどのスケールでも成り立つのであろうか? これについて納得のいく説明を私は読んだことがないのだ。
人間のなすことについてはどうか。これは何回か前に、テニスの話をした。うまくいく確率が三分の一から三分の二の間を揺らぐ、という話だ。こちらは人間が不完全だから、ということで何となく自然現象よりもしっくり来る。しかし人間の行う活動、たとえば株の相場の変動、あるいは人間の血圧、脈拍数の変動が同じような揺らぎの性質を持ち、したがってフラクタル性を示すというのはどうしてだろうか? こちらの方がよほど不思議である。