2019年1月3日木曜日

解離の本 71


4.「黒幕人格」部分をいかに取り扱うか(まとめ)
 
 黒幕さんをいかに扱うかということが、DIDの患者さんの治療の決め手になっていることがお分かりいただけたかと思います。しかしこれまで述べてきたように、面接室のなかで黒幕人格を取り扱うことは非常に難しいことでもあります。そもそも黒幕さん自身の抵抗が強く、簡単には治療場面に登場してくれません。また治療者も、出来れば扱いたくないと感じていることが多いです。外来のクリニックは通常時間刻みで治療が進みます。そこに場合によっては黒幕さんが力を振るい出し、カウンセラー一人の手には負えず、何人かのスタッフが出動する必要が生じることは避けたいでしょう。また通常は黒幕さんは休眠状態にあることが多く、もし治療場面に登場してもらうとしたら、それを黒幕さんを起こすための刺激を与える必要があるでしょう。しかしこうすることには倫理的な問題が絡む可能性すらあります。
しかしながら、黒幕人格が患者さんの生命を傷つけたり、生活場面に頻繁に登場し、生活の質を落とす大きな要因になっているとすれば、患者さんのために取り扱わざるを得ないといえます。このとき、けっして「寝た子を起こす」ようなことがあってはなりません。取り扱う必要があるかどうかに関して、慎重なアセスメントがなされるべきです。