2018年10月14日日曜日

パーソナリティ障害はまだ(サイコパスとポリグラフ)・・・ 13

 ということでサイコパスはポリグラフ(ウソ発見器)を騙すことが出来るか、というテーマだ。
ちょっと調べてみると、liedetectors-uk.com というサイトに行き当たった。これを読むと私がいかにものを知らなかったかを思い知らされた。このブログでも何度か登場しているロバート・ヘア先生が、昔監獄でたくさんのサイコパスを対象に「模擬犯罪」を犯させ、どの程度ウソ発見器に反応するかを調べたという、結構有名な研究があるらしい。すると百発百中だったというのだ。つまりウソ発見器はサイコパスであろうとなかろうと見事にそれを判定する。「『サイコパスは巧みにウソ発見器をすり抜けるのだ』というようなたわ言を言う精神科医は大恥をかいている」と著者は述べる。まさにそのようなことを言いそうだった私は冷や汗をかいたのだ。それもかのロバート・ヘアという大家がその実験を行っているのだから。しかしそうだとしたら、これまでの超能力を備えたようなサイコパスの話はどうなっちゃうのだろうか? 冷血漢で少しも精神や身体に動揺を見せない能力を備えているのが彼らのウリではなかったのか? それでもわずかに出る身体反応をウソ発見器は見逃さないのだろうか? 欧米では、そして日本でもウソ発見器は法廷では認められないのが普通だ。でももしウソ発見器(それも最近ではMRIなどに形を変え、より高度なものになっているのだ)がこれほど正確で信頼に足るものであるとしたら、どうして証拠として用いられないのだろうか? あーわからない。しかしこれが快感である。
 そこでいろいろ調べていくと、この話、かなり複雑らしいことがわかる。上に書いたサイトはウソ発見器の関係者(?)が書いているのだから、当然ウソ発見器のすばらしさを強調する傾向にあるが、実際には嘘発見器の効能に関する実験結果はバラバラらしい。それにこんな話もある。松本サリン事件の第一通報者(河野さんという方)が、警察署でウソ発見器をかけられ、動揺していたために陽性と出てしまったというのだ。私だって、罪を犯してなくても、ポリグラフをかけられたらそうなるような気がする。間違って陽性反応がどうしよう、と思うだけで手に汗をかいてしまい、もう質問をされる前から陽性が出てしまったりして。もしサイコパスがどれほどポリグラフをかいくぐることが出来ても、このサリン事件の通報者のようなことが起きるならやはり証拠としては使われない方がいいのだろうか?
 こんな逸話も拾った。米国で殺人鬼として知られるゲイリー・リッジウェイは、確定しているだけでも49人を殺害した男だが、嘘発見器の検査で陰性と出てしまったために、判決が20年近く遅れることになったという。彼はその意味で完全にデキ上がっていたサイコパスと言える。

 結局私がここで言えること。ウソ発見器には、擬陽性や偽陰性の例があるために、あるいは研究によりその信頼性に差があるために、いまだに決定的な証拠となりえていない。ちなみにウソ発見器をアマゾンで調べると、おもちゃ扱いで安く売っている。「宴会用」とか言って1000円台で売られている。「自分用」に一つ買ってみるか。