2018年9月19日水曜日

ある対談 2

A先生:そしてもうひとつ言えば、“統合”という言い方に対して、クライエントさんはほとんどみんな怯えて、「自分は消されるんだ」というような他の人格の声が聞こえてきて、アポイントメントを取ったけれども、治療者のところに行かないということが起きがちです。すると私たちがまず、心理教育的なアプローチとして必要なのは「みなさん、統合といっても、あなた方の一部が消える、というような話ではありません。」ということを伝えることなんです。初診のときは最初に主人格と話しているときにも、他の人格が聞いている場合があるので、こうして最初から、“皆さんに対して”という言い方が必要になります。ただし同時に伝えるべきなのは、「皆さんの中で疲れたら、寝ていい、そういうことなんですよ」とも伝えるわけです。ということで、それが私のテーマとしてはどうか?と考えたひとつの動機ですけれども、こんなところでいかがでしょうか。

B先生:はい、最初に告白すると、私は解離の治療を統合志向的にやっていたんですね。クラフトとか、パットナムの本を読みながらやっていたものですから、それはもう20年も前のことです。それで自分の臨床体験からなんですけれども、統合の悪影響というのは、特にDIDレベルの人にはたくさん起きて、後になって、うまくいくように、統合…さきほど、統合ファンタジーではないか?というお話もあったのですが、それまで出来ていたことが出来なくなってしまう。たとえば、お姉さん人格とお掃除人格を統合したんですね。ここからだったら、一緒にやれるだろう、ヘルパー的な役割だし、と。そうしたら、お掃除ができなくなった、とかいうことが起きました。あるいは子ども人格と仲の良いお姉さん人格を融合したら、IQが落ちたような感じになっちゃったこともありました。ある種の様々な機能というのを特にDIDレベルの方は持っていらっしゃるので、その機能がなくなったということを数件経験してから、一切統合ということを意図しなくなりました。だから、みんな連携して一緒にやるというところが、私の今のところの一番の目標です。