2018年8月13日月曜日

解離ートラウマの身体への刻印 20

ポリベーガルセオリー、または自律神経系への刻印

ところでこれまでは、転換症状に関係するのは、運動神経と感覚神経であるということにしていた。だからこれらの病変を扱う神経内科に患者さんはまず送られるのである。しかし最近それ以外の神経系、つまり自律神経系もまたトラウマに深く関与しているという説が提唱されている。これは少し前 VDK先生の本を読んでいたら出てきた。こんな風に私は書いた。(コピペじゃないか!

1994年、ポージスという学者が考え出したこの理論。もともとはダーウィンの理論に端を発しているという。自律神経とは要するに交感神経と副交感神経だが、この二つは常にバランスを取っている。私も良くやるが、息を吸い続けていると脈拍が上がり、ゆっくり吐くと今度は下がる。吸気時には交感神経の刺激、呼気時にはその反対。これが常に綱引きをしている。HRVという値が在り、要するに脈拍数がどのように呼吸などにより変動するか、という値だが、これは高いほどいい、という。つまりいつも脈拍が一定、というのは、一見健康そうで、実は交感神経、副交感神経の綱引きがちゃんと行われていないという意味では不健康だという。ボリベーガルセオリーの説明に、ここから説き起こすというのは、VDK先生はさすがだ。ボージス先生の発想も、最初は心拍数がどうして迷走神経によっても強く支配されているのか、という疑問だったという。

 そうか、ここでこの本の説明は止まっていたんだ。それではその続きを読もう。1994年に、メリーランド大学のポージス先生がこの理論を打ち立てた。ポリベイガル polyvagal とは迷走神経 vagal nerve がいくつも分岐しているということだ。ダーウィンがすでにそんなことを言っていたという。 とにかくポージス先生の理論のキモは、腹側迷走神経(VVC)という概念である。迷走神経をよく調べると、腹側に枝分かれをしている、というわけだ。彼が発見したのだろうか? なぜこんなに大事な部分が1990年代まで発見されずにいたのかはわからない。大体マクロ解剖学の世界に、発見されるべきものなど残っていたのだろうか。(後で調べよう)。ともかくもVVCは人が通常は警戒しつつも生きていくうえで大切な部分であり、特に社会生活の中で発達して行ったという。そして危機が訪れると、交感神経系を興奮させ、闘争逃避反応を起こす。しかしそれでも逃げられないとなると、背側迷走神経(DVC)が登場し、体をフリーズさせ、解離を起こさせるという。つまり今、目の前で起きていることに耐えられずにスイッチしてしまう状態とは、このDVCが刺激されている状態というわけだ。ということはスイッチングの決め手になるのもまた迷走神経、ということなのだろう。つまり正常な状態におけるトラウマを回避するための行動も、いよいよトラウマが避けられなくてピンチに至った時の行動も、いずれも迷走神経が関係しているというのがポージス先生の理論である。迷走神経も、これで株を上げたわけである。