2017年11月14日火曜日

公認心理師に向けて 推敲 ②

私はかつてメニンガー・クリニックの病棟で精神科のチーム医療を体験しました。そこでのリーダーは精神科医とはっきり決まっていました。メニンガーからは、岩崎徹也先生や狩野力八郎先生がこのモデルを東海大の精神科に持ち帰り、九州では堀川公平先生が野添病院に持ち帰りました。このモデルでは精神科医が心理やサイコロジストやナースを統括するのです。ところがアメリカでは1990年代になり、そのようなモデルが医療経済的に立ち行かなくなりました。病棟に患者が滞在する日数が短くなると、それに必要な書類書きは倍増します。また医療関係の訴訟が増えると、カルテに記載すべき内容も計り知れなくなります。そして精神科医はケース検討の会議に出ても一ドルも生み出すことが出来ないことから、その時間を削って一人でも多くの患者を外来で診ることを求められるようになりました。そして病棟のリーダーシップは心理士やソーシャルワーカーが担うようになりました。メニンガーでは、医師は今後はケース検討会に出てはいけない、というお達しが1992年ぐらいに出され、医師の側から猛反発も出ました。また米国のVA病院などでは、1980年代から病棟に患者を入院させる権限を持っているのは、なんと心理士だったのです。おそらく将来日本でも精神科病棟では医師が様々な仕事をこなす一方では、心理士がそこでの指揮を執る可能性もあるでしょう。医師は保険点数を加算するための労働、すなわち処方をしたり書類を書いたり5分診療をしたりという以外のことがますます出来にくくなるのです。そうなると心理士がリーダーシップを期待されることが今後は日本でもあり得ると思います。
そこで私が考えるのは、心理士が求められるのは、「マネージメント力」と「面接力」「症候学的理解」の三つだと思います。

「マネージメント力」
「マネージメント力」に関しては、医師、看護、ソーシャルワーカーなどの職種をつなぐ役割というとピンときませんが、それらの職種からなるチームのリーダーとしての役割を発揮すると考えると、また心構えが違ってくるかもしれません。まさに心理士が司令塔になるのです。しかしもちろん公認心理師の学ぶ科目に「病棟で司令塔となる手順」などというものはありません。そのようなことを学校で学んだうえで公認心理師の試験を受けるということなどは出来ないのです。「マネージメント力」は現場で社会経験を積みながら、少しずつ身に着けていくものであり、公認心理師の試験に受かった心理師のうち、誰がその力を将来持つことになるかは賭けのようなものですから、準備のしようがないでしょう。ただし将来現場でそのような立場におかれる場合に備え、その時に役立つであろう基本的な知識や技能を少しでも積んでおくということが大事になってきます。そこで必要になるのが、「面接力」です。