終章を付け加えることになった
終章 - エピローグ 実は皆が持っているナルシシズム
この本もまとめにかからなくてはならない。本章は最後の章でもあるし、エピローグでもある。そこで私のこれまでの個人的な体験を含めて、自己愛について思うところを書いてみたい。
私が本書で描いてきた自己愛な人たちは、おおむね傍若無人で自分のことしか考えていない人たちのように受け取られたかもしれない。確かに彼らは多くの場合は社会の中では強者であり、虐待者の側に立ちやすい存在と言える。彼らの病理を理解し、治療的に扱うことは多くの人を救うことになるのだ。
しかしこのような自己愛者の振る舞いを理解するためには、彼らの心にある、実は非常にか弱く敏感な部分を把握する必要があるということも、本書をこれまでお読みになってある程度お分かりいただいただろう。彼らはそこを突かれ、侵害されたと感じて、周囲に対して反撃しているという場合がほとんどなのだ。この本の執筆の前に、私は『恥と自己愛トラウマ』(岩崎学術出版社、2014)という本を書いていたが、そこではこの自己愛者たちの脆弱性について多くを論じている。彼らの多くは自己愛的なトラウマを受けやすい人々であり、だからこそそれが他人への攻撃に向かいやすい、という説明だ。ちなみに本書の内容の一部がこの本とかなり似通っている部分があるが、それにはそのように執筆時期が重なったという事情があることを、ここで改めてお断りしておきたい。