「心の動かし方」の3つの留意点
これまでミット打ちの比喩、症例A,Bと紹介してきました。そして私の「心の動かし方」は構造を内包している、という言い方をしました。その心の動かし方について、いくつかの特徴を最後にまとめておきます。
1.バウンダリー上をさまよっているという感覚
一つ目は、私はその内的構造を、いつもギリギリのところで、小さな逸脱を繰り返しながら保っているということです。構造の代わりにバウンダリーという見方をすれば、私はその上をいつもさまよっているのです。境界の塀の上を、どちらかに落ちそうになりながら、バランスを取って歩いている、と言ってもいいでしょう。そしてそれがスリルの感覚や遊びの感覚や新奇さを生んでいると思うのです。これは先ほどのミット打ちにもいえることです。コーチがいつもそこにあるべきミットをほんの少し外してみます。あるいは攻撃してこないはずのミットがこちらに向かってくるような、少し意外なそぶりを見せます。すると選手は怒ったり不安になったり、「コーチ、冗談は止めてくださいよ」と笑ったりする。おそらくそれはミット打ちにある種の生きた感覚を与えるでしょう。もちろんやりすぎは禁物です。いたずらに選手にわずらわしさを感じさせるのではコーチ失格です。しかし選手を刺激し、覚醒させ、やる気を引きを起こすのは、本のちょっとした遊び心なのです。
あるいは実際のセッションで言えば、(以下略)