2017年3月15日水曜日

精神分析とは何か ④

 さてもう一つの例は少し複雑です。ある人は「自分は屑で、生きていてもしょうがない」と思っていた人の話です。この方の場合はかなり複雑と言えるでしょう。そのとらわれというのは深刻で、一つの記憶に根差しているわけではありません。(略)
「精神分析は特別なやりかたで、分析を受ける方と精神分析家とが交流する実践です。分析を受ける方がしだいに自分自身を無意識的な部分も含めてこころの底から理解し、とらわれから自由になり、生き生きとしたこころのゆとりを回復させることをめざしています。」(HPより)

 この部分は、では具体的にどのようにして治療を進めるかということを書いてあります。私たちが行うのは、非常に近い距離から言葉を交わし合うことです。実際に治療者と患者の顔の距離は数十センチといったところです。治療者は患者さんの頭の上のかなり近い距離から話しかけることになります。そのようなプロセスで患者さんの心がほぐれ、いろいろ話せるようになると、患者さんはかなり心の奥まで開示することになるでしょう。私たちの脳はふだんは、強い抑制を行っています。大脳皮質は、あれを言ってはダメ、これを言ったら恥をかく、など理性でがんじがらめにしています。それが少し和らぐことで、そのとらわれについて話せない部分が少しずつ明らかになってきます。とらわれとは、本来は人に簡単には言えないことばかりです。それだからとらわれとして定着しているというところがあります。