脳科学的な知見を取り入れたこれからの心理療法
おそらく脳科学的な知見を取り入れた精神療法は、ますます実証主義的なものとなるであろう。ただし実証主義に偏る療法は、精神療法をロボットでも行えるような、無味乾燥で機会を相手にするような、極端認知行動療法に傾くような治療法を要求はしないだろう。
Lambert (1992)の報告は、治療外の要素は40%であり、偶然の出来事、クライエントが本来持っている強さ、リソース、能力など。治療関係に共通の要因は30%を占める。(需要、共感、思いやり、励まし、クライエントの治療への関与の性質、両者の関係性、治療法についての同意など。プラセボ効果は15%。モデルと技法は15%しか占めないという。
ここに示される治療関係は、どれも治療者と患者の人間としてのかかわり、と形容できるだろう。それを本稿では「間主観的な在り方」、すなわち治療者と患者という主観同士のインターラクションを含んだダイナミズムに基づくプロセスと言える。前出の「相互の深層学習」と同義と考えればいい。これは従来の受身的で匿名的な治療者の在り方という考えを大きく変える必要性がある。治療の主体は、患者の主観的な体験を聞いた治療者が、それをどのような主体的な体験として捉えるかを伝える。それを今度は患者がどのように主観的にとらえるかというフィードバックループを形成していくことであろう。