今日新たに書き足した部分
最近の脳科学では、ハイの状態が体験されなくなっても、その行為がやめられない状態、いわゆる「渇望」の状態においては、明らかに正常とは異なる脳の変化が起きていることが確認されている。そしてその状態は体験的には、不安、興奮と言った状況に近いということが示唆されている。より具体的には、いわゆる背側線条体という部分や側坐核に大きな変化が起きている。それが動機づけシステムなどを巻き込み、嗜癖薬物や嗜癖行動の獲得へと駆り立てるのだ。
なんと恐ろしいことだろう!
最後に薬物中毒で脳が変化してしまうということを示すためによく使われる画像を紹介しよう。NIDANotes(October 01, 2010,
Carl Sherman)という学術サイトに掲載されているもので、引用元はテキサス大学のクリストファーコーワン先生のグループの論文(Pulipparacharuvil,
S., et al,2008)である。
Pulipparacharuvil, S., et al. Cocaine regulates MEF2 to
control synaptic and behavioral plasticity. Neuron 59(4): 621-633, 2008.
上下の写真は側坐核という部分の神経線維の樹状突起が、コカインの使用によりどのように変化しているかを示す。上はコントロール群で、下はコカインの常用によりMEF2の活動が抑えられた場合で、デコボコが増えており、そのような変化が脳で起きているということを示す画像である。ただし最近の研究で、樹状突起のデコボコの増加は、動物がコカインの使用に耐えるように変化したのであり、このデコボコの増加を抑制したネズミは、さらにコカイン中毒が悪化するという研究もある。研究とはこのように予想もできない進展を伴うものだが、ともかくもコカイン中毒が脳のレベルで重大な変化を伴うということだけは確かだと言えるだろう。