2016年11月14日月曜日

新・無意識の性質 ③

l        トラウマ記憶はアトラクタである??
ここで今のトラウマ記憶がどのような意味を持つかというと、トラウマ記憶というのは、ネットワークに出来たアトラクターのようなものです。アトラクタとは、ちょうど木星にある巨大な渦のように、そこだけは流れが滞ってしまい、そこに風が流れ込んでしまうと出で来れない。これがニューラルネットワークの渦に常に働き、影響を与えているということが出来るでしょう。この種のアトラクタとしては、強迫思考も、妄想もありうるでしょう。思考の流れがどうしてもそこに落ち込んでしまう。そこに大きく影響されて通常のスムーズな思考が出来ない。このようなアトラクタの存在は心の自由で創造的な活動を阻害するといって言いでしょう。例のA,B.Cではなく、C,D,Aのような組み合わせが自由に生じるだけのスペースが生まれないからと言ってもいいでしょうね。

● 一貫性、プライオリティ、排他性を満たした言動、ファンタジー、夢が「生き残」る場合が多い。
さてこの「一貫性、プライオリティ、排他性」という三つの条件は、ある本から取りました。これらは心が、新・無意識により振られたサイコロの目を、「自分が主体的に選んだものだ」、と認識するための条件です。
 ここに面白い実験があります。被験者のマウスに細工をして、実験者がそれに陰で手を添えるという実験があります。するとマウスが向かった先を、被験者は自分が主体的に選んだものとみなし、その理由付けをします。するとこれまでの自分の主張と一貫しているならより「自分が選んだんだ!」という感覚を持ちやすいわけです。このように考えると、ダーウィニズムとその能動感との関係が近いことが分かります。結局はその人が自分で選んだんだ、という感覚を生むように、新・無意識はさいころに細工をしている、ということになるのでしょう。

●  意識内容や行動の決定(サイコロ振り)には尾状核の関与か?
最後にこのさいころのありかということを考えて見たいのですが、それが尾状核の頭部にあるという可能性があるようです。これは将棋の名人が次の手を探すときに働く部位であるという。最初は理屈で考えて答えを出すうちに、その技に熟達すると自然と直感的に正解を導くようになるという。その際に働いているのが尾状核頭部であるという最近の研究結果がある。東大などが一流棋士に協力を求めて行った実験では、将棋指しはある局面での次の一手を、案外簡単に、それこそ深く考えることなく思いつくそうです。ピンと来る、というやつです。するとその時光るのがこの尾状核。大脳辺縁系の一部です。