退行概念と甘え
退行概念を考えるうえで日本の臨床家が否応なく直面するのが、甘えの問題である。特にその提唱者である土居が甘えを治療論と結びつけているからである。土居は患者が治療者に甘えられることは治療の一つの目標だとする(要出典)。もしそうであるとしたら、治療場面における退行はむしろ土居にとっては必然ということになる。
実は精神分析では、土居に先んじて古澤平作先生が類似の考えを持っていた。「古澤先生は、まずフロイトの技法に則って患者に洞察を求める努力をしているうちに分析することが患者の心をいかに切り刻むことになっているかに気づき、しだいに『自己と患者との融合体験』こそが患者の生命の出発点であり、患者がこの一体感や対人関係での親密な融合感を体験しうるようになることこそが治療の目標である」と考えるようになった。いわゆる「とろかし療法」と呼ばれたものである。」(コピペ)この考えはおおよそウィニコットに近いことになる。来日しているジャン・アブラム先生はここら辺を強調し、「土居とウィニコットは同じことを言っている!」「どうしてウィニコットではなく、バリントを引用しているのだ!」と英語で言っている。松木先生は反対なさるかもしれないが、確かに似ていると思う。ついでに言えば、古澤先生もそうか。