2016年6月14日火曜日

装置 ③

C エレ君の快挙! 「線虫:尿でがん識別...患者のにおい好み近寄る」(3月12日付毎日新聞)、「がんを尿の匂いで発見...九大など、線虫を利用」(同日付 読売新聞)


(昨日の続き)
私はこれを書いていて思うのだが、すでにCエレガンスの段階で、彼はとてつもなく巧妙な装置を備えていない限り生き残れないことになる。瞬時に、より正確に、将来得られる充電の量と、将来高温マットからこうむるであろうダメージを査定し、それを計算に入れたうえで最も合理的な行動を選択できる能力・・・・・。
そのためにCエレ君は、いくつかの重要な機能を持つべきだろう。それは危うく体を溶かされそうになった高温マットの特徴を覚え、それを感知したとたんにそこから遠ざかる能力。(まるで扁桃核だ!)それとおいしい電源マットに出会った時に、その特徴を覚えておいて、それを再び見つけたら尻尾を振って近づく能力。(これも扁桃核、そして海馬も関係するだろう。)ということはつまり、Cエレは記憶装置を必要としているということだろう。これは彼の生存の確立を一気に増すことになる。たとえば高温マットは赤い色をしていることが多い、と仮定しよう。電源マットは青にしようか。するとCエレは遠くにそれを察知した時に、体内のアラームを鳴らす。赤い色を見たら、尻尾を振って遠ざかる。青い色を見たら、そこに向かって尻尾を振って近づく。
ここでこれまでの話をまとめよう。Cエレロボットが生き残るためには、先ほどの3条件にさらにいくつか書き加えられることになる。
4.電源マットを感知したら、その力価を査定できること。
5.  高温マットを感知したら、その「マイナスの」力価を査定できること。
そして、この4,5にとって決定的に重要なのが、記憶、というわけだ。電源マットを見出して、その遠さ、そこに蓄電されている量を予測し、それを獲得することがどれほど利得を与えてくれるかを査定するためには、過去の体験が大きな要素を占める。どんなに魅力的な電源マットでも、はるか遠くにあり、そこに至るまでにCエレ自身の電池を使い果たしてしまったら意味がない。さらにはその途中にコワい高温マットが潜んでいるとしたら、焼かれてしまって元も子もないではないか。これらを勘案して最終行動(つまりどちらかの方向に推進するか、怖い高温マットから退却するか。どれだけの速さで?どれだけの時間?)・・・・・・・。これらはいずれも過去の二種類のマットとの遭遇により生じたことの記憶が大きな意味を持つ。もちろんCエレ君のチップに最初から、「赤からは逃げよ、青には近づけ」と書き込まれていると非常に助かる。しかし自然界にはその両方に明確に分類できないようなマットが至る所にあるとすれば、ある種の記憶の蓄積は必須と言えるだろう。
 こうなってくると、この生存にとって単純な条件しか担っていないはずのCエレ君は、実に複雑なプログラムを書き込まれたチップを必要とすることになる。というよりはそれを備えていないと生きていけない。というよりはそれを備えたものが生き残っていく。そしてそれが事実上の「報酬系」なのである。