ところが事態はそれほど単純ではない。そのことを教えてくれるのが、リンデン氏の書(デイヴィッド・J・リンデン (著), 岩坂 彰 (翻訳) 「快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか」 河出書房新社 2012)の記述である。そこで紹介されているある実験がある。(以前にこのブログに登場したことあり。)
サルを訓練させたうえで、緑の信号を見せる。すると猿の報酬系は一瞬活動を増す。これは「やった、甘い水がもらえる」というサインであり、実際に2秒後に口の中に砂糖水が注がれる。そうしたうえで青信号を導入する。青信号は、甘い水が2秒後に与えられる確率は50%にすぎないようにトレーニングしてあるのだ。すると青信号がともった瞬間にやはり報酬系が興奮し、だらだらと持続し続ける。2秒後にもらえても、もらえなくても、結果が分かった時点で興奮は止んでしまう。なんという驚くべきことだろう。(前から知っていたが)期待するだけで、半ばダメもとでも楽しいなんて。
待っているとき、すでに報酬系が働いている。結果のいかんに関わらず。競馬でいったら、馬券を買ってから疾走馬がゲートに入り、一斉にスタートをし・・・・そのすべてのプロセスが楽しいことになる。たとえ負けたとしても。どういうことだろう? 負けたらもちろん失望する。しかしその分は待っていたときの快感の総和より少ない? そういうことだろう。
それを図示すると以下のようになる(図3)。昨日の図2の通りにはならないわけである。
図 3 |