2014年10月18日土曜日

脳科学と精神分析(推敲)(7)

① 情報処理をするシステム
 脳は確かに情報を統合するシステムと見なすことができる。脳は、ある情報を与えられて、それを全体として判断し、イエス、かノーかを出力するシステムといえる。なぜこう言い切れるかといえば、私たちが通常心を持っていると想定するもの、すなわち動物は突き詰めればこれを行っているからだ。まずある種の知覚情報を入力することができる。そして判断を下すことができる。その判断とは受け入れる(取り込む)か、拒絶する(回避する、逃避する)かという判断である。受け入れるとは、それに接近し、捕食し、あるいはそれにより庇護されることである。拒絶するとは、逆に攻撃されたり捕食されたりするのを回避することだ。生物にはもう一つ生殖という働きがあり、あたかも自分が生存を遂げることが、最終目的であるかのようにふるまう。
さて人間を考えれば、この第一段階の情報処理については、目や耳などの感覚器官がそれを行っているのは明らかである。その情報は大脳皮質に伝えられ、まず第一次~野という部分で処理されてそれが視床に集められたのちに高次の皮質のレベルに上がっていき、それが「何だ?」が判断される。「何だ?」の次に生じるのは、それがイエスかノーか、つまりそれが快か不快か、という判断がなされる。それにより、わかりやすく言えば捕食したり、愛着対象として認知したり、「闘争、逃避」反応が起きたりする。ただし視床からの経路が二つあることが知られている。一つは「速い経路」で、扁桃核に直接つながり、「遅い経路」は前頭葉を遠回りした後に扁桃核に行きつく。その結果として「黒く何本かの足のある物体」は、まず視床で「クモだ!」と認定され、そこからの逃避が始まり、一瞬のちに前頭葉で「本物そっくりのゴムのおもちゃのクモだ」と認定し直されて扁桃核にインプットされ、逃げようとする体にストップをかけるというわけだ。
 さて以上のことを私は精神科医としての常識の範囲から知っている。ちょっと図に描くと

知覚野 → 視床 ⇆ 連合野
           ↓     ⇅
         扁桃核 → 行動

ここで起きていることを再び繰り返すと、心とは情報を統合して全体的に判断して、イエス、ノーを決めるシステムということになり、それは具体的には視床、知覚野、連合野、扁桃核などが司っていることになる。