2014年5月3日土曜日

私の夢理論(5)

フラッシュバックとしての夢
ところで夢の中には、曖昧さがあまり見られないものがある。それが外傷記憶に基づくものである。そしてこれがおそらくレム睡眠として現れる。ある患者さんは過去に様々なトラウマを負っているが、時々見る夢がそれを正確に再現していることに驚くという。ただしその先に続く内容については、見るたびごとに様々に異なるという。このフラッシュバックと通常の夢との違いをどのように理解するべきだろうか?
 通常の夢であれば、昼間のA-B-C-Dというシークエンスによる出来事の記憶は、恣意的な組み合わせが試されることが可能になる。それはA-C-Dであったり、B-C-A-Dであったりするだろう。それが新奇さ、奇妙さ、奇抜さを生むのであろうし、それが創造の過程ともなるであろう。ところが外傷的な出来事についての回想、事実上のフラッシュバクにより構成される夢は、これが不可能となる。P-Q-R-S というつながりは揺るがないことになる。
 ここからは私の推察であるが、外傷記憶のフラッシュバックにおいては、常に同じ記憶内容が判で押したように繰り返して再現されるという性質とそのまま通じるように思われる。通常の記憶が夢の中で可塑性を発揮するということと、忘却の対象になるということが同等の意味を持つというわけだ。