2014年4月12日土曜日

続・解離の治療論(28)解離を臨床でいかに扱うか(2)


今回の「オトナの事情」は、かなりかしこまった筋からの「注文」なので(ナンの話だ?)それなりの文献もそろえなくてはならないが、私は欧米の解離の治療論を読んでもいつもよくわからない。そこで少し無理をしてこのブログに合わせて読んだものが去年の夏にあった。それを書き直しつつここに再び掲載したい。
解離の研究に関しては、解離の国際学会がそのオピニオンリーダー的な役割を担っている。それはInternational Society for The study of Trauma and Dissociation “ISSTD” 「国際解離研究ソサエティ」と呼ばれるものである。そこが発刊している Guidelines for Treating Dissociative Identity Disorder in Adults, third revision (成人DIDの治療ガイドライン、第3版)という論文がある。これはすごく由緒正しい論文だ。つまりこの国際的な学会がガイドラインを作ることを決定して、内部でエキスパートを選んで部会を立ち上げ、書き上げたガイドラインということだ。つまりこれ以上のお墨付きはないことになる。それにこれが書かれたのは2010年と、かなり最近のほうである。ちなみにこの論文は、ISSTDの学会誌であるthe Journal of Trauma and Dissociation のサイトで無料でダウンロードできる。 http://www.isst-d.org/downloads/2011AdultTreatmentGuidelinesSummary.pdf
この論文では初めにDIDの成因についての理論的なことが書かれている。そこには「例外を除いて幼少時のトラウマが原因である」と書いてある。解離は幼少時のトラウマに対する防衛であり、それも闘争・逃避反応のような類のものであり、精神力動的な概念である防衛とは異なる、と断り書きがしてある。

さてここですでに引っかかってしまってはいけないのであろうが、やはり「ン?」となる。幼少時のトラウマ? おそらくそれは大部分のケースにおいて正しいのであろう。でもこれを一律にこう言い切っていいのだろうか?やはりトラウマというよりはストレス、私が昔dissociogenic stress (解離原性)と呼んだものを考える必要があるのではないのだろうか?

ちなみにこの解離原性ストレスというのはある種のトートロジーである。「解離を起こしやすいようなストレス」ということだからだ。でも幼少時のトラウマと言い切ってしまうよりはいい気がする。