もちろん子供の人格が誰の前で、どのような状況で出てくるかにより、その対応は大きく異なる。例えば治療者とのプレイセラピーで出現する場合と、夜恋人の前で突然出てきた場合とではだいぶ事情が違うだろう。あるいは患者さん自身が子供人格の存在を意識しているかどうかによってもその対応は変わってくる。
ここで子供人格が出てくるいくつかの状況をあげてみよう。
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受容的な人にあって誘発される場合 ・・・子供の人格は、幼くて依存的な部分を受け入れ、抱えてくれるような人との間で出てくる傾向にある。それはたとえば恋人や配偶者、教師、先輩、友人、治療者などである。治療者との最初の出会いでもそれは起きる可能性があるが、多くの場合、相手に慣れ、その人との関係を安全と感じる場合に初めて登場するという可能性がある。
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ある種の動作に誘発される場合 ・・・あるDIDの方は、アルバイトでポップを書いているうちに、お絵かきモードになり、子供人格に変わってしまうことがあるという。また実際に治療場面で箱庭やスクイグルなどを行っているうちに子供人格になる場合もある。動物のぬいぐるみを渡されることで触発されて出てくることもある。ある思春期の患者さんは、目を閉じて力を抜いて父親の体に倒れ掛かることで人格交代が生じる。
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視覚、聴覚刺激に誘発される場合 ・・・ 面接室やプレイルームにあるぬいぐるみやバランスボール、玩具、箱庭の用具等に刺激されて、より子供人格が出て来易くなることがある。ある患者さん(30代、女性)は、特定の男性から携帯電話が入り、その男性の声を聞くことがきっかけでその子供人格が出現する。セッション中にも彼が隣にいる患者の携帯電話を通して話しかけることで子供人格に変わることが確かめられた。