2014年1月31日金曜日

職場におけるいわゆる「新型うつ病」について(4)


ここで精神科医張賢徳先生の主張を紹介しよう。以下は私のまとめだ。
「自殺者の90パーセントが精神障害を抱えており、その過半数がうつ病であり、内因性(つまり本格的な、メジャーなうつ)でも、それ以外(例えば現代型うつ)でもうつはうつで自殺は起きうるのだ。ちゃんと対応しなくてはならない。」(こころの科学135「職場復帰」、2007年から)
 これは私も非常に同意できる。そもそも人は好き好んで「怠ける」わけではない。健全な人の場合は、仕事への意欲をなくして怠けたくなっても、興味は別の方向に向かうものである。それがより安易で快楽的な活動に向かうか、より困難で苦しみを伴うものなのかは別として、「何もしなくなる」(怠ける)方向には向かわない。たとえば趣味やゲームに熱中したり、酒や女()におぼれたり、突然山に修行に出かけたり、お遍路さんに出かけたりするなど。いずれもこれらは「怠ける」とは形容されない。身を持ち崩すとか、突然悟りをひらいたり、第二の人生を歩み始めたとかいわれるだろう。いずれにせよ人はひとつの活動をやめても、他の運動やそれにより得られるような快感刺激を求めるのがより自然である。
 もし純粋に「怠けている」様に見えるとしたら、それはその人の活動レベルが、それまでに高すぎたために、いったん休む必要が生じたということになるが、これは怠けではなく必要な「休息」をとっているということになる。結局「怠け病」に見える状態はたいていは、うつ病や精神病による欲動の低下、身体の不調による活動低下という、それ自体が疾患に伴うものであることが多い。
 人の心には常にある種の弁証法が働いている。それは特に葛藤状況で表れ、そこでは二つのモードが綱引きを演じる。一つは「あきらめ・怠けモード」。(「もうたいがいにしようよ。」「あきらめて楽な道を行こうよ。」)もう一つは「イケイケ・モード」。(「ほら、頑張れよ。」「そんなことでくじけてどうする。またあとで後悔するぞ。」など。)
ただし・・・・以下の点は考慮すべきであろう。
① 現代は忍耐についての価値観の変化が生じ、仕事(学習)への嫌悪や不安がより自覚されるようになったのではないか? 
② 現代において人はより他責的になってはいないか?
③「怠け」の手段が多彩になり、より快楽的になってきたのではないか?
④ うつを訴える人の症状の前景にはむしろ、職場に対する恐怖や不安があるようだ。

そこでこれらの問題に焦点を当てたい。