2013年9月21日土曜日

トラウマ記憶の科学(18)

本書は終盤に近づいたが、症例がいくつか載っている。このうちクリフ(168ページ)のケースはわかりにくかったが、臨床的には出会うタイプのケースなので、わかった分だけ紹介する。
 40代前半の男性、結婚して二人の幼い娘がいる。奥さんはキャリアーウーマンで、クリフが稼いでいた給料の5倍は稼ぐというので、彼は結婚してからは主夫業に専念している。朝は早起きをし、二人の娘を送り出し、掃除洗濯をし、午後は夕食のための買い出しをし、学校から戻った娘たちの宿題を手伝って、やがて至福の時間が訪れる。夕方6時を過ぎると妻が帰宅し、家事をタッチ交代してくれる。そこで6時からはクリフの「ドリンキングタイム」となる。妻の帰りを待ちながら、彼は一人の世界に入り込み、寝るまでの時間を満喫するのだ。
 自宅に帰った妻はそのようなクリフに距離を置き、話しかけない。というより彼の方で「話すなオーラ」が出ている。そこで妻はそんなクリフの機嫌を伺い、むしろあまりかかわらないようにしている。ともかくも家事全般をしっかりこなしてくれるので、それ以上は要求しないのだ。
 以下略