2013年8月28日水曜日

解離の初回面接(8…最終回)

診断の説明および治療指針
初回面接の最後は治療者側からの病状の理解や治療方針の説明を行う。無論詳しい話しをする時間的な余裕はないが、短い面接から理解しえた事柄、診断的な理解、治療指針を大まかに伝えることで、面接を受けた側の自己理解も深まり、治療指針についてより具体的なアイデアを描くことが出来るであろう。もちろん短い時間では話を十分に聞けなかった部分、それらが推測によるものであることも伝える必要があるだろう。
 診断に関してはそれを伝える立場と伝えない立場があるであろうが、解離性障害に関する診断的な理解を伝える意味は大きいと筆者は考える。少なくともいま体験している症状が、解離性のものであるという理解を伝えることの益は大きいであろう。それは一つにはいまだに多くの場合、統合失調症という診断を過去に受けており、時にはそのような説明を受けていないというケースが非常に大きいからだ。医師が解離性障害を統合失調症と理解することによる被害は甚大である。医師は統合失調症を判断した患者を秒識を持ち得ないと判断し、詳しい診断を伝えない傾向にある。しかし「治療」だけは行われ、鎮静作用が強く副作用の多い抗精神病薬を処方されることには変わりない。
 DIDであること、別人格が存在することについては、それを伝えることによる患者さんの反応はさまざまである。時には非常に大きな衝撃を示す方もいる。初回面接の最中から「私は多重人格ではありませんが…」とおっしゃる方もいる。しかしその存在を伝えることで多くのことに納得がいったという反応もある。
 解離性障害という見立ての場合には次の大枠を伝えることが出来るであろう。いくつかの条件がそろった場合には、予後は決して悲観的ではないということである。そしてその条件とは、重大な併存症がないこと、比較的安定した対人関係が保てること、そして重大なトラウマやストレスが今後の生活上は避けられるということである。

治療方針については、基本的にはサイコセラピーが有効であること、ただしそのセラピストが解離の病理について理解していることが必要であることを伝える。
 初回面接には時間的な限りがあるために、解離性障害についての解説書を紹介することも有用であろう。