2013年7月22日月曜日

「現代型うつ病」とはフォビア(恐怖症)である(1)

昨日は小寺財団主催で「関係精神分析」のセミナーを開催した。院生も参加してくれた。和やかに進行。内容には自信があるのだが、参加者の数はいまいちであった。とにかく参加していただいた方々には感謝したい。

現代型うつ病という言葉を昨今よく聞く。臨床でもしばしば出会う(ことになっているが、私にはよくわからない。普通のうつが依然多い気がする。)概念は一種の流行といっていいし、それなりに誤解されているような気がする。この件についてちょっと考察を加えてみたい。
現代型うつ病の概念が知られるようになったのはこうだ。最近若者が仕事を放り出して安易に会社に休暇願を出す。特に病気でもなさそうなのに、医者は「うつ病」の診断書を書き、それを聞きとして提出する。何かおかしい。現代の若者に特徴的な病気ではないか?鬱は鬱としても「現代型うつ病」とでもいうべきであり、その本態は鬱ではなく、単なる怠けである・・・・。本屋で見かける関連書籍も似たような論調で書いてある。
●それは「うつ病」ではありません! 林公一先生 宝島社新書
●それって本当に「うつ」? 吉野聡先生 講談社α新書
l  「私はうつ」と言いたがる人たち 香山リカ先生 中公新書
l  仕事中だけ「うつ病」になる人たち 香山リカ先生 講談社

2007年の「こころの科学 #135」はこの問題を特集したが、サブタイトルがまた同じトーンである。「職場復帰 うつかなまけか」
この書の冒頭で編集を担当した松崎先生が書く。
「『本当にうつ病なんですか? なまけなんじゃないんですか?』こうした人事担当者の問いに窮する企業のメンタルヘルス関係者が増えてきた。近年、企業内で増えているのは、従来のような過重労働のはてにうつになる労働者たちではなく、パーソナリティの未熟などに起因する「復帰したがらないうつ」である。
従来のうつの場合は、治療早期にもかかわらず、早く復帰することを焦るケースが多かった。ところが近年では寛快状態となり職場復帰プログラムを開始しようとしても「まだまだ無理です」と復帰を出来るだけ回避しようとするタイプが増えてきている。」(松崎一葉)

さらに「人事担当者には、外見上の元気な姿や友人と楽しく語るさまを見れば、「なまけている」としか映らない。会社を長休職していることに「申し訳ない」という気持ちは少ない。主治医の診断書は「うつ状態にてさらに一ヶ月の休養を要す」と毎月更新される。「いったいいつまで休むつもりなのか?」と人事担当者や上司は苛立つ。時には、このような状況が就業規則で定められたギリギリの休職期限まで続く。」(松崎一葉)