2012年10月30日火曜日

昨日の続き

さて本書の内容にも少し触れたい。


本書『関係精神分析入門』は、米国で一つの大きな流れを形成しているRelational Psychoanalysis (関係精神分析)という流れを日本に導入しようとする試みである。ただしこの流れは既に関西の分析家達にはある意味では先取りされている。というのも関係精神分析は従来の対人関係学派に端を発しているが、その中心人物であったハリー・スタック・サリバンやエーリヒ・フロム、フリーダ・フロムライヒマン、カレン・ホーナイ達については、すでに既に神戸の中井久夫先生や広島の鑪幹八郎先生により紹介されているからである。そして対人関係学派の拠点であったニューヨークのホワイト研究所で訓練を受けた鑪先生の後に続いてホワイト研究所に留学した先生方が中心となり、京都には日本の精神分析学会とは別個に、京都精神分析・心理療法研究所という機関が設立されている。そこでは当然対人関係学派の流れの先にある関係精神分析にもなじみが深いことになる。他方では東京と福岡を中心とした日本精神分析学会は、むしろそのようなアメリカの精神分析の流れを吸収する流れは薄く、むしろイギリスの対象関係論の流れが強い。日本精神分析学会に属しているが、その中で関係精神分析の流れを取り入れたいというのが私自身の立場なのである。ただし私の立場は、サリバンへの興味から入ったというのではなく、関係精神分析の論客であるアーウィン・ホフマンの理論に対する私淑から始まったという事情がある。そして京都の流れを日本精神分析学会でも取り入れることができたら、という希望が、この本の出版へとつながった。

今回このような個人的な願望を果たすためのお手伝いをいただくことになった●崎●術出版社の長●川●氏には、いつもながら感謝したい。

これじゃまだ短いなあ。