ある三題噺
ある妊娠中の患者さんが、おなかの中にいる赤ちゃんに違和感、いやもっと言うと異物感、嫌悪感を抱いていたという。「どうして私の体の中でもうひとりの生物が大きくなっているの?なんの断りもなしに。」彼女はやがて生まれてくる赤ん坊とどんな対面をしたらいいかと途方にくれたという。そして当然ながら生まれる不安。「私はちゃんとお母さんになれるのだろうか?」・・・ さて赤ん坊が無事生まれて3ヶ月。彼女は子育てに没頭して、充実した毎日を送っているという。こんな話を聞くと精神科医は思う。「ハハー、脳の中でアレが出たんだな。最初の授乳の時。これは間違いなし。」
ハタネズミには、草原に暮らすタイプと、山に暮らすタイプがある。前者は一夫一婦なのに、後者は一夫多妻である。あとは見た目は変わらないのだ。ではどこが違うかというと、オキシトシンの受容体が、後者には非常に少ないと言うことがわかったという。そしてそれはおそらく昔突然変異により生じたであろう事、そして遺伝子のちょっとした変異により動物の行動パターンがここまで違ってくると言うことを教えてくれたことになるのだ。そして前者のオキシトシンをブロックすると、とたんに夫は妻の元に帰らなくなってしまうというわけだ。人間の場合はどうかを想像しないではいられないではないか。
ある妊娠中の患者さんが、おなかの中にいる赤ちゃんに違和感、いやもっと言うと異物感、嫌悪感を抱いていたという。「どうして私の体の中でもうひとりの生物が大きくなっているの?なんの断りもなしに。」彼女はやがて生まれてくる赤ん坊とどんな対面をしたらいいかと途方にくれたという。そして当然ながら生まれる不安。「私はちゃんとお母さんになれるのだろうか?」・・・ さて赤ん坊が無事生まれて3ヶ月。彼女は子育てに没頭して、充実した毎日を送っているという。こんな話を聞くと精神科医は思う。「ハハー、脳の中でアレが出たんだな。最初の授乳の時。これは間違いなし。」
今度はうちの家人の話である。「チビ」(我が家の犬の名前である)のこととなるととても犬とは思えない。最近亡くなったのだが、その前の数週間ほどは、まさに息も絶え絶えとなって居間の毛布の上に横たわっていた。おしっこのときも散歩の要求が出来ないし、そもそも立って歩く力すらなかった。だから家族が外出するときなどは、オムツをさせるしかないが、家人はそれは忍びないという。「それくらいならカーペットの上でもしてもらっていいわ。」という。「どうして?」と私。すると「だってオムツにするのは気持ち悪いでしょう、かわいそうじゃない!」「ハア?」とまた私。「だってチビは犬だし、いくらなんでもペットに気を使いすぎじゃないの?」すると家人は言ったものだ。「チビはペットじゃないわ。家族なの。」ウーン。ということは家人もチビに向かうときにはきっとアレが出てるんだろう。おそらく。
週刊誌をにぎわす某芸能人。とっかえひっかえ女性を変え、すぐに飽きてしまう。言葉巧みに女性を誘うことだけは超一流だが、その後の関係が続かない。こいつの頭にはアレの受容体が少ないんだろう。おそらく生まれつきだね。
週刊誌をにぎわす某芸能人。とっかえひっかえ女性を変え、すぐに飽きてしまう。言葉巧みに女性を誘うことだけは超一流だが、その後の関係が続かない。こいつの頭にはアレの受容体が少ないんだろう。おそらく生まれつきだね。
もうアレが何かはお分かりであろう。オキシトシンである。人と人とを結び付ける実に不思議な物質なのである。 医学部時代(はるか昔である)は、オキシトシンは子宮収縮・射乳ホルモンと習った。脳下垂体の後葉から出るホルモンである。女性の出産や授乳の際にジワーッと出るホルモンということになる。これにより赤ちゃんが生まれるように子宮が収縮し、次に母乳が分泌されるという両方の働きをしてくれるわけである。しかし自然界とはよく出来たものだ。このホルモンが動物の愛着にも関連していることが徐々に知られるようになった。これが分泌されるとその時関わっている相手に対する愛情がわくというわけだ。これって赤ちゃんにお母さんが愛着を持つ為にこの上なく都合がいい。母親はこうして一生赤ちゃんにほれ込んで面倒を見続ける運命になるというわけだ。
ところでオキシトシンについては、これもかなり定番になっているハタネズミの話がある。これ自体非常に興味深いのであるが、散々いろいろなところで書かれていることなので、私が改めて文章にするよりは、解説書から引用させていただきたい。「はじめての進化論」河田雅圭 講談社現代新書、1990年から以下にエッセンスだけを抽出するとこうだ。
ハタネズミ
http://plaza.rakuten.co.jp/gokki/diary/20090818/ より拝借 |