2012年7月17日火曜日

続・脳科学と心の臨床 (52)

さてうつ病のDBSであるが、PDなどと違ってこちらはまだ始まったばかりという印象を受ける。今年の1月にサイエンティフィックアメリカンの電子版に乗った記事を参考にしよう。http://blogs.scientificamerican.com/scicurious-brain/2012/01/09/deep-brain-stimulation-for-major-depression-miracle-therapy-or-just-another-treatment/


まずうつ病に関しては、60%しか現在の治療に反応しない、という現実がある。現在の治療とは抗うつ剤やCBT(認知行動療法)や電気ショック療法など、現在知られている治療である。ということは40%の人たちはうつにじっと苦しみ、自然と回復するに任せていると言うことである。この40%を対象にDBSが行われるということになる。
内側前頭前野(赤の部分)


DBSで最初に注目されたのは、ブロードマン25野というところ、内側前頭前野という部分である。図の赤い部分を参照(図はhttp://www.ask.com/wiki/Prefrontal_cortexより)。ここがなぜ注目されているかというと、この場所が大脳皮質と、それ以下の大脳辺縁系や脳幹とをつなぐ節目のような枠目を果たしているからだという。だからそこを刺激することで脳の広い範囲に影響を与えるという。ラットの実験では、この部位に相当する脳に刺激を与えることで、「ネズミうつ」に対する効果があったという。ネズミうつとは、例えば強制水泳テストに対する反応で分かるという。抗鬱剤を投与されたネズミは、このテストの反応が良くなるということで、ネズミのうつ病モデルとして用いられるという。この臨床テストでは、20人の難治性うつ(つまり従来のうつ病治療に反応しない40%のうつ病に相当する状態)の60%は顕著な抗うつ効果を見せたという。しかしこれは20人のうち12人を引いた8人にはいい結果をもたらさなかったということでもある。そしてそのうち一人は電極を抜いてほしいと申し出たという。ちなみにDBSの副作用としては吐き気やおう吐がみられ、また結局20人のうちの二人は自殺をしたということである。