2011年9月6日火曜日

対人恐怖とは何か?(7)

A;まあ対人恐怖の人はみな偉くなる、というわけでもないでしょうけどね。

Q:あれ、最近ちょっと言葉キツくないですか。最近。まあそれはそうです。つまり私が言いたいのは次のことです。対人恐怖とは要するに相手が自分を見て、自分が何を相手に表わして、あるいは隠しているかということについての敏感さゆえに身動きが取れないほどの状態なのです。私は漱石のファンといえばファンですが、彼の文章を読んでいると、ほとんどそのことばっかりやっているのではないかと思うことがあります。
人と人とのかかわりに繊細でそこで生じるさまざまな力動を奥深く追求するために、対人恐怖的な敏感さは大切だ、というわけです。ただしもちろん退陣恐怖は知的に優位な人が起こしやすい、というものでもないんです。特に知性とは関係ないし、もうひとつは男女差もはっきりしないんです。それは日本の研究でも、アメリカの研究でも同じです。
Q:それでは先生、治療法についても教えてくださいますか?
A;そうですね。精神科医としてはお薬による治療とカウンセリングとの組み合わせがベストであると考えます。手っ取り早いほうの薬からいきますか。不安障害については、人類はある種の特効薬を持っています。それがいわゆる精神安定剤というやつです。「安定剤」とか「抗不安薬」とか「トランキライザー」という言い方をした場合、たいていこれをさすわけです。これは1950年代以降に発見されたもので、急場しのぎにはとても助かります。とりあえずこれを飲んでおくと心が落ち着く、という薬です。対人恐怖の人でこれを使うことで、苦しい場面をやり過ごすという人はかなり多いようです。
Q:安定剤ですね。私も局に勤めているので、生放送の前に緊張した人が何か「デパス」とか言う薬を飲んでいるのを見かけたことがあります。